主要国連機関の人事政策動向2025

当センターが入手した最新人事政策動向をお知らせします。

*ワシントンでの世界銀行、ニューヨークのUNFPA、UNICEF、ジュネーブのWHO、当センターと各機関の人事担当部長等との意見交換に基づく情報です。

グローバルヘルス人材Update ― 厳しさを増す雇用状況 ―

21世紀に入ってからグローバルヘルス分野へ振り分けられる資金量は一貫して増え2000年の143億ドルから2021年の840億ドルのピークを迎えたのち減少に転じ、2023 年は646 億ドルと凡そ25%減少し、更に減少を続けていると考えられています。その要因は、COVID-19 パンデミックが終息したことに加え、環境問題、移民対策、ロシアによるウクライナ侵攻等による資金の競合が増したこと、更には、欧州諸国における政権交代に伴う対外的なコミットメントの後退などがあったと説明されています。そして、米新大統領の誕生によるWHO 脱退やUSAID の大幅な縮小などが決定打となって、政府からの保健援助費に多くを依存する機関の財政困難が一挙に顕在化しています。多くの機関において人件費は主要支出項目であるため、その抑制が不可欠と見なされると思われます。例えば、グローバルヘルスに関わる人材数を当センターが調査した下図によると5000 人弱の国連機関職員が第一波の人材調整に見舞われることと予測されます。事実、当センターの人材登録システムに掲載された空席情報を確認すると国連機関、特に、保健関係の雇用先としては最大大手のWHO からの公募情報が減少しています。また、同機関は①新規募集の抑制、②非常勤雇用職員の延長中止と常勤職員の任期更新期間を1年に短縮、③早期退職の推奨などを他の緊縮策とともに職員に通知したと伝えられています。 センターとしては人材分野の動向や主要機関の人事政策の変化の把握に努め、我が国の人材が国際機関で活躍できるように支援する戦略を考えてゆくこととしています。また、関連情報の発信も強化していく所存です。

(ニュースレターvol.30 より抜粋)

グローバルヘルス人材公募数からみる就職氷河期の状況

国際機関のグローバルヘルス分野における人材公募の減少が、深刻な「就職氷河期」を引き起こしています。人材センターは、国連機関やNGO など27の保健関連国際機関の公募情報を集め、検索可能な形で公開する活動を行ってきました。希望者は専門分野や勤務地などの条件を登録すると、該当するポストが掲載された際に通知を受け取れます。

2024 年は毎週150 以上の空席ポストがありましたが、状況は一変しています。2025年1月に米国がWHO を脱退したことを契機に、静かに進行してきた地政学的変化や気候変動、地域紛争対応による資金需要の増加と変化が顕在化して、グローバルヘルス分野への資金配分の大幅に減少が明らかになりました。結果として、新規人材募集が激減し、求職者にとって厳しい環境が生まれています。

現在、非医療職バックグラウンドのグローバルヘルス人材が応募できる国連の一般職ポストを加えても新規募集数はかつての1/3以下。WHOが公募するポジションも特定国の支援を前提としたものや、内部応募者が優先されるものが増えています。また、即時の採用ではなく、候補者プールを作るための募集もあり、新規採用の機会は非常に限られています。UNAIDS、Global Fund やGavi では新規募集停止状態にあります。この厳しい状況を、保健関連8 機関の新規公募数の推移を示す図(左)で確認できます。一方、人道援助団体のMSFやMDMでは、現場の医療要員の公募が小規模ながら続いている点は、一筋の希望の光となっています。

(ニュースレターvol.31 より抜粋)

ジュネーブ出張報告:厳しさを増す国際機関の雇用状況

中谷比呂樹センター長は、2025年5月12日(月)・13日(火)にジュネーブの国際機関を訪問し、日本政府代表部、WHO人事担当者や諸機関の邦人幹部職員と面談を行い、雇用状況の 把握と意見交換を行いました。その後、WHO 執行理事会事業 予算管理小委員会(PBAC)やWHO 総会にも参加し、現行お よび次期予算が職員へ与える影響について最新情報を収集しました。

米国のWHO脱退に注目が行きがちですが、各国のODA削減が基盤にあり、WHOを含む国際機関の財政は逼迫し、事業の優先順位付け、組織改革と人員削減が避けられない状況となっています。特にWHOは、新型コロナ対応によって拡大した予算・組織の調整局面にあり、本部組織の大幅なス リム化から始め、地域事務局と各国駐在事務所を巻き込んだ大きな事業・組織・人員の整理を進める方針です。およそ3割の職員が在職し、人件費の高い本部では、6月からポスト整理の検討を開始し、7~8月には本格的な雇用調整が予定されるとの工程表がPBAC で示されました。人員削減の対象 として、まず任期付きの短期契約職員、次いで勤続10 年未 満の若手常勤職員、さらには長期勤務者にも影響が及ぶ見込みです。これにより、若手職員の雇用継続が非常に厳しくなることが予想されます。日本政府代表はPBAC で、わが国 のunder-representation(職員数が標準数を下回っている)状態に鑑みて人員調整の局面では相当な配慮がなされる べきだと主張されました。地元専門情報誌Health Policy Watch 2025年5月16日号では、WHO Budget Cuts May Slash 30% of Mid-Level Staff, Spare Most Senior Roles とのヘッドラインでPBAC に示された26-27年予算上想定 されるランク別職員数と2024年末現員数との比較表を掲載して大きな衝撃を関係者に与えました。

全文は以下から見ることが出来ます。
https://healthpolicy-watch.news/who-projects-30-reduction-in-mid-level-professionals-for-26-27-few-highlevel- staff-to-go/  

また、各部門のコスト削減策として、本部機能をより低コストの地域やホスト国からの財政支援が得られる所在地へ 移転する案も検討されています。候補地として、感染症危機管理の拠点となるドイツ・ベルリンや、各種研修の実施拠 点としてのフランス・リヨンが挙げられています。  このような厳しい状況の中、人材センターは邦人職員のリテンション支援を強化し、ジョブフェアを通じたグローバ ルヘルス関係国内ポストの情報提供など支援活動を行ってゆく予定です。
これらは第一回アドバイザリー会議で承認 いただいた内容であり、今回の調査を通じて、こうした支援策の重要性が改めて確認されたと考えています。

(ニュースレターvol.31 より抜粋)

ニューヨーク出張報告:国連改革の最前線から

 2025年9月4・5日、グローバルヘルス人材戦略センター長は ニューヨークを訪問し、国連機関における予算削減および組織再編に関する情報収集と意見交換を行いました。  

まず、日本政府国連代表部を訪れ、ODA 削減の国際的な流れの 中でも日本は現行水準の維持に向けて努力を続けていること、また 邦人職員支援に対する外務省の揺るぎない姿勢を伺い、大きな励みとなりました。外務省との連携をさらに強化してまいります。続いて、WHO、UNICEF、UNFPA の各事務所を訪問し、幹部職員との 面会に加え、若手職員から現場の声を直接伺う機会を得ました。現在、国連では創設80周年を契機とした「UN80改革」が進行中であり、未曽有の財政危機への対応として、①効率性の向上(経費削 減)、②業務の見直し(マンデート整理)、③構造改革とプログラム 再編(組織の統合・再編)が推進されています。  

2026年度の国連通常予算案では、2025年比で15.1%の予算削減、18.8%のポスト削減が提案されており、総会で議論が続いています。グローバルヘルス分野では、コロナ対応による一時的な予算 拡大の反動もあり、UNICEF 保健部門は約3割の人員削減とナイロビへの移転、UNFPAは本部自体をナイロビに移すことで、現場に近い拠点からの支援継続を図っています。WHO は独立予算を持つものの、さらに厳しい削減が進行中であり、現在ほとんどの機関で外部からの新規採用は停止、内部候補者限定の募集に留まっています。JPO 派遣については、外務省の尽力により予算は確保されているが、円安の影響で派遣人数の減少は避けられず、人材戦略にも影響が及んでいます。

こうした状況を踏まえ、センターでは現職員のリテンション支援や内部昇進支援を強化することとし、厚生労働省・外務省との連携のもと、アドバイザリー会議の助言を得ながら活動を企画してまいります。若手職員との意見交換では、雇用不 安やキャリア維持への支援ニーズが顕在化し、Leave Without Pay制度やメンタリング制度への関心が高いことが確認され ました。人材センターとしては、制度的アドボカシーの強化、ジョブフェアの開催、メンタリングによる昇進支援、さらには将来の雇用回復を見据えた先行投資型研修の実施など、具体的な取り組みを本年度後半に集中して展開していく予定です。  

国連改革の進展に伴い、邦人職員の活躍の方途は大きく変化しています。制度面・情報面の両側から支援を強化し、 次世代の国際人材育成に貢献してまいります。

(ニュースレターvol.32 より抜粋)